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「近世化」論と日本

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2015年07月07日

洋学 at 13:17 | Comments(0) | 書評

◆『「近世化」論と日本』(勉誠出版、2015年6月25日、2800円)が出た。本書は、約10年前ころからの歴史学研究会において、近代化論があるのになぜ近世化論がないのか、東アジアの近世と日本の近世とはどうリンクするのか、しないのか等の議論と問題意識から、2012年の歴史学研究会部会合同シンポジウム「近世化論と日本ー東アジアの捉え方をめぐって」での発表がもとになっての論考集である。 ◆編者清水光明氏によれば、「東アジア近世」論や「近世化」論とはなにかを把握するために、第Ⅰ部は「近世化」論における日本の位置づけを、小農社会、新興軍事政権、朱子学理念から考えるとし、第Ⅱ部は、「「東アジア」の捉え方」と題し、対外関係史や比較史研究によって捉え直し、第Ⅲ部は、「近世史研究から「近代」概念を問い直す」として史学史や時代区分、規範等の観点から「近代」概念を問い直そうとしているとした。 ◆Ⅰ部には牧原成征「日本の「近世化」を考える、杉山清彦「二つの新興軍事政権ー大清帝国と徳川幕府」、岸本美緒「「近世化」論における中国の位置づけ」(コラム)、綱川歩美「十八世紀後半の社倉法と政治意識ー高鍋藩儒・千手廉斎の思想と行動」、清水光明「科挙と察挙ー「東アジア近世」における人材登用制度の模索」、朴薫「東アジア政治史における幕末維新政治史と”’士大夫的政治文化’の挑戦」、道家真平「「明治百年祭」と「近代化論」」(コラム)などを掲載している。 ◆Ⅱ部には、清水有子「織田信長の対南蛮交渉と世界観の転換」、木崎孝嘉「ヨーロッパの東アジア認識ー修道会報告の出版背景」、吉村雅美「イギリス商人のみた日本のカトリック勢力ーリチャード・コックスの日記から」、根占献一「ヨーロッパ史からみたキリシタン史ールネッサンスとの関連のもとに」(コラム)、屋良健一郎「近世琉球の日本文化受容」、井上智勝「近世日越国家祭祀比較考ー中華帝国の東縁から南縁から「近世化」を考える。藍弘岳「「古文辞学」と東アジアー荻生徂徠の清朝中国と朝鮮に対する認識をめぐって」(コラム)、岡崎礼奈「「アジア学」資料の宝庫、東洋文庫九十年の歩み」(博物館紹介)などから、東アジアと日本を捉え直している。 ◆第Ⅲ部には、宮嶋博史「儒教的近代と日本史研究」、三ツ松誠「「近世化」論から見た尾藤正英ー「封建制」概念の克服から二時代区分論へ」、中野弘喜「歴史叙述から見た東アジア近世・近代」(コラム)、古谷創「清末知識人の歴史観と公羊学ー康有為と蘇輿を中心に」、佐々木紳「オスマン帝国の歴史と近世」(コラム)、高津秀之「ヨーロッパ近世都市における「個人」の発展」、三谷博「東アジア国際秩序の劇変ー「日本の世紀」から「中国の世紀」へ」(コラム)が掲載され、東アジアの近世・近代をさまざまに論じている。 ◆再び編者の解説にもどると、「近世化」論は従来の古代・中世・近世・近代の4段階区分論にのって、そのなかでいつから近世が始まったのかという議論から開始され、東アジアのなかでどのような位置づけにあるかという比較史的検討が開始され、「近世化」の指標や時期設定についての研究が開始されたのであるとし、さまざまな角度からの指標や説明モデルの提示によって、議論や相互批判を活性化することになるのだろうということで、本書ではそれぞれの近世化とはなにか、東アジアにおける日本の近世の意味とは何かの論が出され、統一的な見解は出されていない。 ◆このように多様な論者によって様々な角度から、日本「近世化」論が語られている。編者によれば、どこか気がついたところから読んでいただければという。佐賀大学地域学歴史文化研究センター講師の三ツ松氏による尾藤正英氏と宮嶋博史氏の論は表裏一体であるという指摘が印象的であった。本書は21人もの多様な分野の執筆からなり、それぞれの「近世化」論や東アジアの近世論が語られていて、統一的見解がないので、百家争鳴の迷路にはいったような気持ちにもなり、ハードであるが、本書全体を時間があるときにじっくり読んでみたい。 ◆補筆をしておくと、医学史の分野では、真柳誠(茨城大学)・肖永志(中国中医科学院)両氏による「漢字文化圏古医籍の定量的比較研究ー各国伝統医学が共有可能な歴史観の確立」http://www.jfe-21st-cf.or.jp/jpn/hokoku_pdf_2008/asia08.pdf…' (JFE21世紀財団報告書、pp67~78)が、本書の各論部分を適切に構成することになろう。関心のある方はあわせて読むことをおすすめする。真柳誠「日韓越の医学と中国医書 」(日本医史学雑誌 56巻2号. 151-159 、2010)などの同氏の漢字文化圏における医学史研究の成果と視点は、我が国近世医学史研究において最も重要な指標の一つになるだろうと考えている。また近年においては町泉寿郎(二松学舎大学)氏の一連の研究(たとえば科研「漢籍抄物を中心とした中世末期~近世初期の学術的展開に関する基礎的研究 」2010~2013など)も重要である。 ◆医学史の分野からは本草学研究についても重要な視点を提供することになる。その意味では、ミヒェル・ヴォルフガング氏の近年の本草学研究も西洋だけでなく中医学史・近世医学史に、新鮮な視点を提供してくれるだろう。 ◆このように、各研究分野での指標を出しあい、比較しあうことは「近世化」論争においては、それなりに多様な議論をもたらし、「近世」を再吟味する意味を豊かにすることになろう。が、あえて時代区分についての感想をのべれば、やはり日本では、社会構造の変化を基底にすえた原始・古代・中世・近世・近代(現代)という時代区分論が今のところ最も整合性のあるように考えてはいる。


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