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井上友庵の医療器具(1)購入願い

井上友庵の医療器具(その1) ◆『蓮池藩日誌』文化15年正月18日記事に、文化14年10月に出された井上友庵から藩への医療器具購入のための資金25両拝借願が記録されています。解読した原文は下に解読して貼り付けておきますが、大意は以下のようです。

 私、井上友庵は去去年(文化12年)に名医である華岡青洲先生のもとへ医学稽古に出させていただきましたが、数箇条の相伝をうけるためにも、京都へ修業に行きなさいと先生に言われ、去年から京都でも学んでおります。相伝をうけて帰郷するにあたり、華岡流医療器具を購入しないと、郷里で御奉公も叶いません。(京都三条通りの安信に)見積もりをとりましたところ、高額でした。ただ、入門時にあまりにも多額の雑費がかかり、また京都でも諸費用がかかったため、このままでは購入がかないません。そのため25両を拝借いたしたくよろしくお願いします。返納は帰郷後3カ年、もしくは俸給のなかから引いていただいてもかまいません、文化14年10月、井上友庵、森川八郎右衛門様というものでした。

...

◆以下、京都三条通りの安信なる鍛冶師からの見積もりがありますが、結構多くの商品と値段がでており、長文となりますので、解読は次回にします。 ◆名医といわれる外科の多くは、現在でも独自に工夫した外科道具を用意しています。華岡青洲もまた、自分の手にあった独自の外科道具を用意して、京都寺町の鍛冶師真龍軒安則に特注しています。もしかすると、三条通りの安信と同一の鍛冶師かもしれません。                         ◆華岡青洲の門人に本間玄調がいます。その著『瘍科秘録』六巻之上に、青洲のメスと玄調のメスの違いがカラー図説で載っています(写真)。青洲のメスのほうが直刀風で、本間玄調は手が大きかったでしょうか。青洲より大ぶりです。

 奉願口上覚 私儀外療未熟ニ御座候處より 紀州華岡随賢名医之趣、及 承候ニ付、暫年之間、随身稽古 仕度ニ付、御暇奉願候處、願通 被 仰付難有奉存候、依之 去々秋より罷越打部稽古出精 仕候処、大ニ心ヲ副、取立被呉、数 ケ条之相伝等、可有之処、文盲 ニ有之候而者、右相伝仕候而茂 其詮無之ニ付、医学修業仕 候様右師家より被申聞候故、去 秋より京都之方江茂罷出、双方 懸ケ候而、医学稽古仕居 申候、然処㝡前罷登候砌者 諸事稽古中、御助成ニ 不相成、勿論当御時節柄 過分之御当介被為拝領候故 右を以万事相整候心得ニ御座候 処、花岡家入門之砌、諸雑用 多有之、先生初同門中江茂 身祝之手数等有之、過分ニ入用 銀相増、扨又京都江茂数ケ所江 入門仕、是又雑費多有之存外之 金子入越、甚当惑仕、其上花岡 流之外療稽古仕候ニ付而者、右 流之療治道具所持不仕候而者 療治方可仕様無御座、右品々 相調候得者、過分銀高ニ而、別判 書付之通御座候、一躰者右ニ而 金不相揃候ニ而者、無御座右丈位 成共、無之而者罷下リ候而も、何之 御奉公茂出来不申候、当時御物入 多被為 在候得共、正金弐拾五両御 取替被差出被下度奉願候、然時ハ 御蔭を以、右療治道具相整 且又諸相伝等仕誠以難有 仕合奉存候、返納之義者、罷下 候而、両三年ニ御返納被 仰付 於被下者聊茂無間違御返上申 上義ニ御座候、自然相滞候節者 拝領米より御引当御返納可被成下、願 之通、被仰付被下候様、深重奉 願候、此旨、御国元江御取扱被仰届 被下候様御願仕義ニ御座候、猶委細 之義者口達仕候 己上  丑十月      井上友庵  森川八郎右衛門様  (『蓮池藩日誌』文化15年正月)


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