top of page

井上友庵の医療道具(5)ヒストロス

井上友庵の医療道具(5)ヒストロス

◆友庵は、ヒストロスを1本7匁5分で購入予定です。さて、ヒストロスとはなんでしょう。ミヒェル先生らの江戸のモノづくり報告書の九州国立博物館の医療器具調査のなかに、ヒストロス(ヒストロメス)がありました。それは先が細く曲がった写真のようなものです。何でしょうか。瘻孔刀といい、痔の部分を切開する刀です。 ◆痔の手術は、シーボルトもやっています。天理大学図書館にある、シーボルトの現存唯一ともいうべき手術記録「シーボルト治療方」には、1諸熊仙輔の陰嚢水腫手術、2長崎在稲佐村のお岩の咽頭部腫瘍治療、3肥後国熊本臣西浜正蔵の痔瘻治療、4崎陽平戸町人西浜正三郎の咽喉発痛治療、5長崎浜ノ田町河内屋九郎右衛門、50有余歳の咽喉発腫の治療、6肥後国熊本細川臣野口律兵衛少年、12歳の頭部腫瘍手術の6つの外科手術が記されていますが、熊本の家臣西浜正蔵さんの痔の手術には、このヒストロメスを使ったと考えられます。 ◆江戸時代に、痔でなやむジヌシさんも実は多くいたのです。松尾芭蕉もその一人でした。奥の細道で、出羽越えをして鳴子温泉の近くの農家に宿をかりた芭蕉が詠んだ句が、「蚤虱 馬の尿(しと)する枕元」です。この句を安らいだ気持と解釈する人もいますが、むしろ、痔の痛みに耐えられず眠れない、しかも蚤やシラミのいる、ひどいことに馬の尿の音も聞こえるような農家に宿をとり、まんじりともしない芭蕉の心を詠んだとも考えられます。


特集記事
記事一覧
アーカイブ
タグ
Follow Us
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page